当ブログのリンク欄に「魚ココロあれば水ココロあり(リコプテラさん)」が加わりました。
興味深い記事を沢山書いておられ、以前から時折覗かせて貰っていまして、今回、私的にストライクな記事が出ましたので、コメントを入れ、繋いで頂きました。
そこで触発され、私も想う所を一つ書いてみます。私も過去記事で少しだけ取り上げてきましたが、昨今の漁協の放流事業について、です。
私的な憶測と感想が多く入ること、ご容赦くださいね。
・花魁アマゴとは

朱点が大きくて、その数がとても多い。
この個体はサイズもプロポーションも申し分ないんですが、放流魚なのでしょう。
体側線上と、その上下で3本の帯のように朱が並んでいます。これは天然種ではまず見られないものです。

こちらは大きめの朱点が並んでいますが、これはまだ少ない方で、それに側線上の朱点はさほどではない。
肌艶は綺麗でやや銀毛掛かり、体躯も良し。川育ちらしさが感じられる個体でした。
この個体は花魁系の親(雌雄どちらか)から川で生まれたのではないか、と私は考えています。

これらは鱗が荒く、朱点は多く、顔付きと言い、養殖っぽさを感じます。でも各ヒレはピンと張ってるし、丸っきりの放流成魚ではないように見えました。しかし、
どうも・・天然アマゴのイメージとは・・。稚魚なのか成魚なのかハッキリとは分かりませんが、養殖放流魚には違いなさそうです。
この派手目な朱点のタイプは一般には「花魁アマゴ」と呼ばれて、もっと派手に朱点の出た個体も居ます。
各所の釣果画像で登場していて、朱点の着き方には、いろんなバージョンがあるようです。興味ある方がみえましたら、「花魁アマゴ」で画像検索してみて下さい。私の過去記事も、出てくると想います。
お断りしますが、私は生きる命にケチつけるつもりはないです。
でも感覚的に、私が釣りたい、出会いたい魚のイメージがありまして、「大きく派手な朱点」は、印象がややマイナス。私の知る「天然のアマゴ」は、朱点の出方が控え目です。
ただ花魁系にも個体差があり、朱点が派手に散っている事以外は、天然魚と遜色ないアマゴも居ますし、天然ぽい個体でも朱点が多目、大き目な個体も居ます。

この個体は綺麗な天然アマゴ。↑の花魁系とは、かなり雰囲気が違います。
初めて花魁系アマゴの姿を見たのは、いつ頃だったか記憶が曖昧ですが、ここ10年くらいで、各地に増えたような?
漁協による放流魚の中に、こうした魚が居るのは確かみたいで、朱点がやや多めな個体は随分前にも居ました。
が、花魁系の広がりを私が観察するに、年々朱点の出方がキツくなり、天然種の姿から離れている、とも感じるんです。
諸説ありですが、ヤマメとの差異を強調する為に、養魚場で朱点を意図的に強く発現させている、とのこと。配合飼料の成分で、こうして姿を変えられるのだそうです。「朱」ですから、甲殻類に多く含まれる、アスタキサンチンでしょうか?
点で部分的に発色すると言う事は、色素細胞に特徴があるはずで、するといつもは見えないだけで、アマゴの表皮には元々そうした部位があるのかもしれません。
・養殖のアマゴに思う事
養殖場で生まれ育ったとして、飼料の違いで朱が強く出るのなら。
稚魚のうちに川に放たれれば、その後は朱が消えるかと言えば、そうではないみたい。稚魚であっても、30センチを超すほどのサイズに育っても、花魁はやっぱり花魁なんですよね。
更には、川生まれと思しき稚魚と、秋の繁殖シーズンで婚姻色を纏う成魚では、このタイプのアマゴは滅多に見ません。
これらの事から、花魁アマゴはその多くが、繁殖行動に参加していないと私は考えています。

この画像のアマゴが、私が今まで見た「秋」の花魁系としては一番と言うか、野生、天然っぽさを感じる魚でした。出会ったのは9月後半です。
婚姻色が入り始め、ウロコの皮下埋没が起きていて、手前側のは鼻先が曲がっています。これは繁殖行動に入る少し前のアマゴと見えます。
つまり花魁系でも、一部は成熟個体になってるんですね。
ここからは完全な推測です。
養魚場で花魁系を育てるための飼料を与えられたアマゴは、何代にも渡って、その特徴を継いでいるんじゃないでしょうか。
つまり代が進むごとに、花魁の特徴が強くなるのでは?
花魁の雌雄を親にすると、生まれた仔は、多くが花魁になりそうで、これがこのタイプが見られる河川での、漁協の放流魚苗ではないかと想うのです。全ての放流魚がこうなのか、その割合までは分かりませんが。
更には人工授精で交配を繰り返せば、自然繁殖する能力も低下するかもしれない。
でもその中にも天然の遺伝子の濃い個体は居て、それらは自然河川で繁殖行動をする、と。
このことは「朱点」と言う、目で見て分かり易い特徴があることで、私ら釣り人でも養殖もしくはその血筋だろうと推察が出来ます。
おそらく姿が目立つのは、稚魚もしくは成魚放流か、あるいは親魚で放流された花魁の仔であろうと想います。
では見た目に区別のつかない、天然ぽい養殖稚魚の放流アマゴだと、どうなるのでしょう?
水産庁によると、稚魚放流の量を増やしても、必ずしも渓魚が増えるとは限らないのだそうです。資料はこちら。
成魚で放流されると、ほぼ繁殖はしないとも聞きます。でも親魚放流を導入してる漁協もありますから、養殖魚は産卵しない、ってことでは無いと想うのですよね。これは生簀育ちで大人になった魚は遊泳力が足りず、繁殖時期まで生き延びないし、産卵場所まで遡上できない、のが理由だとか。
水産庁の資料では、天然魚と養殖魚の間に生まれた魚は、養殖魚のみの交配より定着率が高い、とあります。
ならば養魚場の渓魚には、時折は天然のDNAを混ぜることが良い、のでしょうね。
そうすることで、養殖放流魚の姿も天然種に近づくかも?
しかしそれだと、意図的に育てた派手朱点の花魁系は特徴を失う? 私個人としては、その方が嬉しいですけども。
私は素人ですので、だからどうすべき、と結論は出せません。
ただ、もし放流魚苗に天然魚の血が必要なら、漁協のアナウンスがあれば、採取くらいは釣り人が手伝えそうな気はします。そうでないなら、特別許可で網を使って捕獲するとか?

先の話に戻しますと、花魁アマゴが現れたのは、私の知る限りはそんなに大昔ではありません。
ですが近年増えてる傾向を私は感じていて、アマゴであればどんな姿でも良いとは考えていませんから、残念な気持ちで見ています。やはり渓流魚は、美しく格好良く、かつ地域ごとに個性を感じられるのが魅力です。
それに姿こそ天然に近くても、繁殖力に難があるのであれば、それはそれで考え処かと。
漁協には魚の増殖義務が有りますから、同じく放流するのならば、釣りの対象としてその魚が生きるのは勿論、その後成長し、無事に子孫を残せるのが理想的でしょう。
それには放流魚の性質も勿論ですし、繁殖可能な環境が大事だと想います。養殖場の魚をただ放流すれば良い、と言うものではないのじゃないですかね。
私は一釣り人として、その地に馴染んだ、美しい野生の魚に出会いたいと想い、渓流釣りをしています。
そうした渓魚を育む環境が、この先もずっと続くことを願っています。
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