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2021年1月20日 (水)

花魁アマゴ・漁協の放流事業

当ブログのリンク欄に「魚ココロあれば水ココロあり(リコプテラさん)」が加わりました。

興味深い記事を沢山書いておられ、以前から時折覗かせて貰っていまして、今回、私的にストライクな記事が出ましたので、コメントを入れ、繋いで頂きました。

そこで触発され、私も想う所を一つ書いてみます。私も過去記事で少しだけ取り上げてきましたが、昨今の漁協の放流事業について、です。

私的な憶測と感想が多く入ること、ご容赦くださいね。

 

 

 ・花魁アマゴとは

Dsc_s2

朱点が大きくて、その数がとても多い。

この個体はサイズもプロポーションも申し分ないんですが、放流魚なのでしょう。

体側線上と、その上下で3本の帯のように朱が並んでいます。これは天然種ではまず見られないものです。

Dsc_nat2

こちらは大きめの朱点が並んでいますが、これはまだ少ない方で、それに側線上の朱点はさほどではない。

肌艶は綺麗でやや銀毛掛かり、体躯も良し。川育ちらしさが感じられる個体でした。

この個体は花魁系の親(雌雄どちらか)から川で生まれたのではないか、と私は考えています。

Dsc_2117

これらは鱗が荒く、朱点は多く、顔付きと言い、養殖っぽさを感じます。でも各ヒレはピンと張ってるし、丸っきりの放流成魚ではないように見えました。しかし、

どうも・・天然アマゴのイメージとは・・。稚魚なのか成魚なのかハッキリとは分かりませんが、養殖放流魚には違いなさそうです。

 

この派手目な朱点のタイプは一般には「花魁アマゴ」と呼ばれて、もっと派手に朱点の出た個体も居ます。

各所の釣果画像で登場していて、朱点の着き方には、いろんなバージョンがあるようです。興味ある方がみえましたら、「花魁アマゴ」で画像検索してみて下さい。私の過去記事も、出てくると想います。

 

お断りしますが、私は生きる命にケチつけるつもりはないです。

でも感覚的に、私が釣りたい、出会いたい魚のイメージがありまして、「大きく派手な朱点」は、印象がややマイナス。私の知る「天然のアマゴ」は、朱点の出方が控え目です。

ただ花魁系にも個体差があり、朱点が派手に散っている事以外は、天然魚と遜色ないアマゴも居ますし、天然ぽい個体でも朱点が多目、大き目な個体も居ます。

Fb_img_1608791928021

この個体は綺麗な天然アマゴ。↑の花魁系とは、かなり雰囲気が違います。

 

初めて花魁系アマゴの姿を見たのは、いつ頃だったか記憶が曖昧ですが、ここ10年くらいで、各地に増えたような?

漁協による放流魚の中に、こうした魚が居るのは確かみたいで、朱点がやや多めな個体は随分前にも居ました。

が、花魁系の広がりを私が観察するに、年々朱点の出方がキツくなり、天然種の姿から離れている、とも感じるんです。

 

諸説ありですが、ヤマメとの差異を強調する為に、養魚場で朱点を意図的に強く発現させている、とのこと。配合飼料の成分で、こうして姿を変えられるのだそうです。「朱」ですから、甲殻類に多く含まれる、アスタキサンチンでしょうか?

点で部分的に発色すると言う事は、色素細胞に特徴があるはずで、するといつもは見えないだけで、アマゴの表皮には元々そうした部位があるのかもしれません。

 

 

 

 ・養殖のアマゴに思う事

養殖場で生まれ育ったとして、飼料の違いで朱が強く出るのなら。

稚魚のうちに川に放たれれば、その後は朱が消えるかと言えば、そうではないみたい。稚魚であっても、30センチを超すほどのサイズに育っても、花魁はやっぱり花魁なんですよね。

 

更には、川生まれと思しき稚魚と、秋の繁殖シーズンで婚姻色を纏う成魚では、このタイプのアマゴは滅多に見ません。

これらの事から、花魁アマゴはその多くが、繁殖行動に参加していないと私は考えています。

Dsc_lm3

この画像のアマゴが、私が今まで見た「秋」の花魁系としては一番と言うか、野生、天然っぽさを感じる魚でした。出会ったのは9月後半です。

婚姻色が入り始め、ウロコの皮下埋没が起きていて、手前側のは鼻先が曲がっています。これは繁殖行動に入る少し前のアマゴと見えます。

つまり花魁系でも、一部は成熟個体になってるんですね。

 

 

ここからは完全な推測です。

養魚場で花魁系を育てるための飼料を与えられたアマゴは、何代にも渡って、その特徴を継いでいるんじゃないでしょうか。

つまり代が進むごとに、花魁の特徴が強くなるのでは?

花魁の雌雄を親にすると、生まれた仔は、多くが花魁になりそうで、これがこのタイプが見られる河川での、漁協の放流魚苗ではないかと想うのです。全ての放流魚がこうなのか、その割合までは分かりませんが。

更には人工授精で交配を繰り返せば、自然繁殖する能力も低下するかもしれない。

でもその中にも天然の遺伝子の濃い個体は居て、それらは自然河川で繁殖行動をする、と。

 

このことは「朱点」と言う、目で見て分かり易い特徴があることで、私ら釣り人でも養殖もしくはその血筋だろうと推察が出来ます。
おそらく姿が目立つのは、稚魚もしくは成魚放流か、あるいは親魚で放流された花魁の仔であろうと想います。

 

では見た目に区別のつかない、天然ぽい養殖稚魚の放流アマゴだと、どうなるのでしょう? 

水産庁によると、稚魚放流の量を増やしても、必ずしも渓魚が増えるとは限らないのだそうです。資料はこちら。

 

成魚で放流されると、ほぼ繁殖はしないとも聞きます。でも親魚放流を導入してる漁協もありますから、養殖魚は産卵しない、ってことでは無いと想うのですよね。これは生簀育ちで大人になった魚は遊泳力が足りず、繁殖時期まで生き延びないし、産卵場所まで遡上できない、のが理由だとか。

 

水産庁の資料では、天然魚と養殖魚の間に生まれた魚は、養殖魚のみの交配より定着率が高い、とあります。

ならば養魚場の渓魚には、時折は天然のDNAを混ぜることが良い、のでしょうね。

そうすることで、養殖放流魚の姿も天然種に近づくかも?

しかしそれだと、意図的に育てた派手朱点の花魁系は特徴を失う? 私個人としては、その方が嬉しいですけども。

 

私は素人ですので、だからどうすべき、と結論は出せません。

ただ、もし放流魚苗に天然魚の血が必要なら、漁協のアナウンスがあれば、採取くらいは釣り人が手伝えそうな気はします。そうでないなら、特別許可で網を使って捕獲するとか?

Dsc_kknm

先の話に戻しますと、花魁アマゴが現れたのは、私の知る限りはそんなに大昔ではありません。

ですが近年増えてる傾向を私は感じていて、アマゴであればどんな姿でも良いとは考えていませんから、残念な気持ちで見ています。やはり渓流魚は、美しく格好良く、かつ地域ごとに個性を感じられるのが魅力です。

それに姿こそ天然に近くても、繁殖力に難があるのであれば、それはそれで考え処かと。

漁協には魚の増殖義務が有りますから、同じく放流するのならば、釣りの対象としてその魚が生きるのは勿論、その後成長し、無事に子孫を残せるのが理想的でしょう。

それには放流魚の性質も勿論ですし、繁殖可能な環境が大事だと想います。養殖場の魚をただ放流すれば良い、と言うものではないのじゃないですかね。

 

私は一釣り人として、その地に馴染んだ、美しい野生の魚に出会いたいと想い、渓流釣りをしています。

そうした渓魚を育む環境が、この先もずっと続くことを願っています。

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釣り語り」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
そちらの川にいる花魁アマゴと呼ばれる魚は、木曽川の放流魚ほど朱点が乱れていないし野性味を持っていますね。

この水産庁の資料は素晴らしいですね!
読んでビックリしました。こんなに渓流魚の放流について研究していて、ちゃんとしたデータが出ているとは。
天然魚、野生魚、養殖魚(継代養殖魚)、半天然魚、半野生魚の定義に始まり、放流に関する指針までしっかり示されていて、とても勉強になりました。

半天然稚魚や半野生稚魚は継代養殖稚魚に比べて2.5〜3.5倍放流効果が高いということがわかっている以上、後はコストとの兼ね合いということになりますよね。
半天然稚魚や半野生稚魚の放流に加えて、禁漁区の設定や尾数制限の設定などと合わせて自然繁殖できる環境も整える方向性が良いんじゃないのかな、と私は思います。

この資料を各漁協で熟読してくれていることを祈ります。

リコプテラさん、こんばんは。

水産庁の資料に基づいて、放流方法を研究されてる漁協もありますね。
それでもやはり、放流魚の歩留まりには苦労されてるそうです。
近年、産卵場所の造成も注目されてるみたいですね。

仰られる通りで、環境面の整備は大事ではないかと私も想います。このあたりは漁協も判断が難しそうですけどね。
良い環境が続くことを心から願う次第です。


今回の記事で使用したのは、最初の3枚と、最後の1枚は木曽川水系の釣果です。花魁タイプでも、そこそこ野性味がありますよね。確か2014~15年頃でした。
記事の本文にも書きましたように、年々養殖っぽさが増してる気がして、残念な想いが私にはあります。
おそらくは継代養殖魚の一つの形だと想うんです。
漁協にはここは一考頂きたいと、一釣り人として想っています。

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