「サクラマスのまもり方・ふやし方」パンフレット|水産総合研究センター「北海道区水産研究所」
興味を惹かれる資料でした。
サクラマスがいま、危機的な状況になっています
太平洋側のアマゴの降海型のサツキマスも、北陸河川においての鮭の遡上が激減していることも事実。
海産の鮭類に何が起きているかは、温暖化や海流や、諸説が唱えられています。ですがおそらく現在の状況は単一の理由でなく、複合的に絡んだ話で、「何か」を変えたら劇的に回復するとか、そうではなさそう。
そこで資源回復をしようと、放流を増やそうとの考えもあるわけですが、放流量が増えても、必ずしも魚の総数は増えないことは分かってきてるようです。
ただ、漁協には放流の義務があり、その実績がないと補助金が下りないなど、制度上の話も聞きます。今後さらに研究が進んで、効率の良い増殖法が見付かると良いなと、期待したいところ。
それでも資料のように、今時点での調査の結果が出ている内容については、打てる手は打っていかないと、と思う次第。とは言え、私のような一介の釣り人に出来ることは殆どないかもしれない。歯痒いところではありますが。
特定の魚種が減ったら→放流 あるいは→養殖 のような、単純回答ではないと思うんですよね。勿論、そうした取り組みを真っ向否定するのではなくて。
資料の「4」に放流は種苗を選んで慎重かつ適切にとの項が出てます。
何でも魚を放流すれば増えるものでもありません。サクラマ
スは、川毎に遺伝形質(遺伝子のタイプ)や生態特性(例えば
親のサイズや産卵、降海時期など)が異なっているので、他
の川由来の魚を放流することはそれらの性質を失わせること
にもなります。
また、その他、すんでいる川の環境(水温や勾配、水量、河
畔林の有無など)によって、すめる量や成長にも差が生じる
こともあります。
元々その川にいる魚を大事に育み、増やしていくこと
が何より大切です
資源が減ったりして放流しなければならない時には、まず、
その川由来の種苗にしましょう。また、その場合でも、何世
代も池で飼われていた系統の種苗はさけた方が良いでしょ
う。
これはサクラマスに限らず、ですね。
私自身はアマゴ域を主に釣っていて、ヤマメ域の事は疎いのですが、漁協の放流事業については、正直、疑問を感じることは少なくないです。全国各地の内水面で、現状の放流魚はどうなっているでしょうか?
漁協の放流は増殖を目的としていますが、それは「釣り人が釣る」ことにフォーカスしている現状はあるかと。内水面漁協組合は漁師の集まりではないですから、活動が「游漁」に寄るのは仕方ないかもしれません。
成魚放流やC&Rなどはその形態でもありますね。これらは魚族の繁殖とはまた違う方向性です。
サツキマスやサクラマスの歴史として、氷河期までは全てのアマゴやヤマメは降海型で、その後河川残留型が定着したと考えられています。
現代ではダムや大きな堰の上流には遡上できない環境が多く、そうした河川では海と山との繋がりは断たれています。
ところがそのダムや大きな本流に、上流から下降する個体群が居ます。本来であれば海まで行くはずの魚が、途中の水域で成長し、海育ちの魚と同様に再び河川上流に遡上し、繁殖行動をする。下降型の鱒類は河川型よりも平均して大きくなります。また、大きく育つ遺伝子を持つ魚が下降型になる率が高いことも知られています。
源流に近い山間部、海からの距離が離れた水域ほど、河川残留型が多くなるデータもあります。これは我々釣り人は誰でも知っていることですね。
一個体が一回の繁殖で残す子孫の数は、下降・遡上型の方が多い(その代わりに繁殖回数が少ない)。良くも悪くも現代の環境は、大型が育ちにくい上流部に、多くの子孫を残す可能性もあり得ます。(遡上が出来ない環境に棲む魚の繁殖については、今回は省略)
これらを「現代の魚」と呼ぶべきか判りませんが、その魚の系譜は、元々の地元の遺伝をどれだけ持っているでしょう?
ダムや堰堤の出現で出来た環境で育ち、行われてきた放流事業で生まれた、その子供たちが私達が釣りをする相手なのではないか。私のキャリアでは、河川の構造物も放流もない時代の魚を実際に見ておらず、どうしても想像に拠るしかない部分があります。つまり、分からないことだらけ。
また、現代の陸封型遡上魚が、河川型魚と交配するとして、その子孫はどんな形質になるのか、私は関心があります。勿論、良い意味で持続性の高い魚族繁殖があって欲しい。
種の保全の意味では、河川型でも遡上型でも同じ魚なので、大型の繁殖機会があることは良いことのはず。
ただしこのことは、人の手が入った環境で逞しく生きる数種の命を育てることにはなっても、元々の鮭科の遺伝である、降海と遡上が無くなって良いとはならないです。
鮭科の魚が海から遡上し、産卵後は斃死します。この際に海の栄養素が多量に運ばれてきて、その身体が陸上・水中の生き物たちの餌になり、植物も昆虫も、様々なものたちが育っていきます。
こうしたサイクルが閉じることは、自然環境には好影響にはなりません。海から遡上する鮭類には、自然の中での役割があるのです。だからと言って、ダムを破壊するとか、そうした極端なことは現時点では無理です。
私自身、北海道道東地区に夏に釣りに行った際、群れを成して遡上するサクラマスやカラフトマスを見ました。
河川型のヤマメやイワナの魚影も非常に濃く、海山川の自然の豊かさであろうと。
残念ながら普段の私の遊び場では、あのような魚影の濃さは見たことがなく、群れを成す遡上魚も今は幻になりつつあります。しかも遡上魚減少は、この数年で非常に顕著になったと私は感じます。
私は釣り人ですから、環境の良し悪しの判定として、「自然の生まれ育ちと思しき魚が良く釣れるかどうか」を挙げます。
多くの魚が息衝く河川は、対象魚だけではなく、動植物も含めた自然が健全なのでしょう。
資料によれば、「危機的」とまで評されるサクラマスが、環境如何では増殖する可能性は示唆されています。
海からの遡上魚が増えることは、森の生育を助け、他魚種を育むことにもなり得る。
こうした話題を私のような釣り人が考える際、「釣りたいから」も動機の一つで良いかなと想っています。釣りを通すことで、環境を体感できますから。
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